相続税・遺産相続の計算例

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相続財産の評価

亡くなられた人の財産を相続すると相続税を支払う義務が生まれます。相続税は残された遺産を対象に計算されるのですが、財産は現金ばかりではありません。土地などの不動産や建物、その他の動産、権利といったものを「OOO円」と決定するのは非常に難しいものです。しかしすべてを金額におきかえる必要があります。この換算を評価といいます。財産評価の原則は時価であると相続税法には定められています。また国税庁は「財産評価基本通達」でそれぞれの相続財産に対する評価の方法を示しています。

宅地の評価方法として、路線価方式と倍率方式というのがあります。路線価方式というのは、宅地が接する道路につけられた価格に応じて土地を評価する方法です。相続するのが市街地の土地などのときによく用いられる方法です。道路の価格がない市街地外の宅地の場合などは宅地の固定資産税評価額に倍率をかけて計算して宅地の評価をします。これが倍率方式です。

株式の評価方法はその株式の状態により異なります。上場株式、気配相場のある株式、取引相場のない株式に区分されています。貴金属や書画、骨董品といった相続財産は被相続人が販売のために所有していたものであれば、棚卸し資産として評価され、それ以外趣味、娯楽といった理由で所有していた場合は、売買実例の価格やプロの鑑定価格などを参考にして行われるようです。

相続税の計算

遺産額の合計から基礎控除額を差し引いてプラスに残ったものが相続税の対象となります。相続税は相続をする人それぞれの計算式となりますから、まずは対象額を相続分と同様に分けます。分けられた一人一人の財産の額に対して税率が決められています。相続税率は取得財産が多ければ多いほど高くなっています。1,000万円以下なら10%ですが、それぞれ段階的に上がり、1億円を超えると40%、3億円を超えると50%にもなります。この率をかけて計算した上で、それぞれの決められた控除額を差し引きます。

例えば、亡くなられた人に妻と子供が二人いたと仮定しましょう。基礎控除を差し引いて残った遺産が8,000万円だったとします。妻の受け取り分は半分の4,000万円。税率は20%、控除が200万円なので、相続税は4,000×20%-200=600万円となります。子供たちそれぞれは、受け取り分が2,000万円、対する率が15%、控除50万円で、相続税は250万円となります。よってこの家族が収める合計額は600+250×2=1,100万円となります。

驚くべき数字だと思われますが、これには続きがあり、この計算された金額からさまざまな控除や「配偶者の税額軽減」といったものが適用されますので、実際の納税額は異なってくるようです。ただし、どの控除も対象ではない場合はこの驚くべき数字を相続税として納めなければならないのです。

相続税の必要性

亡くなられた人の財産を受け取った相続人は、この遺産に対して税を納める義務があります。相続税がいくらになるのかの計算は、遺産額と控除によって決まります。まず覚えておくといいのは、相続税の基礎控除額です。無条件に認められる相続税の基礎控除は5,000万円です。それに法定相続人の人数x1,000万円が控除としてプラスされます。

例を挙げてみましょう。死亡者の遺産額が8,000万円だとします。死亡者には妻と子供が3人いたとすると、法定相続人の数は4人となり、基礎控除額は5,000+4,000=9,000万円となり、遺産額を上回るので、税を納める必要がないというわけです。税を納める必要がないなら、申告や手続きといった手間も省けます。相続税の心配をあれこれされる前に、早めに遺産の合計額をきちんと計算して納税の必要性を確かめましょう。

遺産の合計を算出する際はまず亡くなられた人の財産をすべてチェックします。墓地や墓石、仏壇は課税の対象ではないようなので除くことができます。それからローンや未払いの医療費、買掛金などの債務を差し引きます。葬式にかかった費用(香典のお返しのための費用は含まれません)なども控除できるようです。これらを差し引いて遺産合計額を出してください。この合計額とさきほど紹介した基礎控除額を比べ、遺産額が多ければ相続税を納めなければいけません。

相続にまつわる対策

遺産が多ければ多いほど相続にまつわるトラブルというのは発生しやすいものです。遺産相続にかかわる一族の争いなどが展開されるテレビドラマなどもよくあります。ドラマよりすさまじい現実もあるかもしれません。よって相続にまつわる対策は遺産を残す人が生存しているうちにたてておくことがおススメです。自分の死後のことですが、人生明日何があるかわかりません。健康であっても対策を早めに考えておくことは大切です。

まずは遺産の受け取り分などで争いが起こらないようにする対策として一番有益なのはやはり遺言書を書いておくことです。次に相続税対策です。相続税の税率は遺産が多いほど上がります。節税するためには、できるだけ遺産を減らすことも対策のひとつです。遺産を減らす方法として、生前に贈与するというのも対策のひとつです。しかし贈与についても贈与税が課税される場合があるのでよく調べて最善の方法を考えましょう。

他の対策として相続税がかからない墓地や墓石、仏壇などを買うというのも良いかもしれません。生前中に自分の墓石や仏壇などを用意するのは不思議でしょうが、現金で残すと税金がかかってしまうので、早めに買ってしまったほうが節税できます。

また相続人が増えれば、その分控除額もあがるので、養子縁組などをして相続人を増やす対策も考えられます。

遺産相続

人が亡くなるとその人の財産を相続するわけですが、遺産には一体どういうものがあるのでしょうか。まずわかりやすいのは、土地や建物、現金、株式といったものでしょう。土地は宅地に農地、山林、また貸地も含まれます。建物に関しては自宅、アパート、マンション、工場、などが挙げられます。

現金については銀行などへの預貯金、どこかの企業への出資金、手形や小切手などの有価証券が遺産として相続できますが、同時に金銭の債務、連帯保証債務といったいわゆる借金も遺産として相続しなければいけません。借金が遺産だなんて、ちっとも嬉しくないものですが。このほか、車や美術品、骨董品、果樹や農器具なども遺産相続の対象となります。

また各種権利も遺産として相続できます。ゴルフ会員権や商標権、特許権、著作権、電話加入権、慰謝料請求権などが挙げられます。これら遺産として考えられるものはすべて相続税課税の対象となることを覚えておくといいかもしれません。

墓地や墓石、香典、遺族年金、また入会権(山林に立ち入る権利)、入漁権(他人の漁場で漁業する権利)、扶養請求権といった権利、信用保証債務、身元保証債務は非遺産として考えられているようです。生命保険金や死亡退職金は非遺産として区別されます。しかしこれらは相続税課税の対象となるので注意することが必要です。

相続にまつわる問題

亡くなった人の財産を相続する時には、遺産の受け取りをめぐって問題が多発しているようです。その対策のひとつが遺言です。財産を残す人が生存している時に相続に関する意思を示しておくことで多少の問題も解決できるかもしれません。

遺言書にはいくつか種類があります。自ら内容や日付を書き、署名押印するものを自筆証書遺言といいます。相続分をどうするかなど本人の希望を伝えるのに有益ですが、急な死亡などで他の人が遺言のことを知らなければ発見されないという問題もあります。

公証証書遺言は公証人と2人以上の証人が立会い、遺言者の口述を公証人が書き留めて作る遺言です。余命があと少しといった時に、相続問題を防ぐためにも病院のベッドで寝たきりで遺産相続についての遺言を残すのによく用いられます。公証人が作成してくれるので自分で書けない状態でも問題なしですが、病院への出張や作成に費用がかかり、証人をおくということで秘密性に関して多少の問題は生じます。

また秘密証書遺言というものがあります。遺言者が相続などについて自分で書いた遺言を封印したのち、公証人と証人2人以上に確認してもらうものです。よって死亡後に遺言の存在が明らかなのは利点ですが、内容は誰も確認していないので、相続内容などに不備があると問題が発生することもあります。この秘密証書遺言は自筆証書遺言と同様、裁判所の検認を要するので手続きなどに手間がかかるというのも問題点のひとつです。

相続分

遺言などで亡くなられた人の遺産をどのように分けるか特定の指示が残されなかった場合、トラブルが発生しないよう民法では相続分の割合を定めています。この民法に示されている分け方を法定相続分といいます。

亡くなられた人に配偶者と子供がいる場合、相続分は配偶者に2分の1、子供に2分の1となります。子供が何人かいる場合は、その2分の1をそれぞれ均等に分けます。亡くなられた人に子供がいない場合は、配偶者の相続分は3分の2となり、残り3分の1は死亡者の父母が貰い受ける権利があります。父と母ともに生存しているときは、その3分の1を分けます。父母ともにいないときは死亡者の祖父母がその相続分を受け取ることができます。父母や祖父母、このような直系の親族が死亡者にいない場合は、死亡者の配偶者の受け取り分は遺産の4分の3となり、残り4分の1は死亡者の兄弟姉妹が受け取る権利があります。兄弟姉妹が何人もいるときは、この4分の1を均等に分けます。これが一般的な相続分です。

また亡くなられた人に内縁の妻などがいるケースとして、内縁の妻は法的に配偶者ではないので、法定相続分はありませんが、その間に生まれた子供(非嫡出子といいます)が認知されている場合は、法的な夫婦間の間に生まれた子供(嫡出子といいます)の相続分の2分の1を受け取る権利がありようです。

相続人

亡くなられた人の財産(遺産)を貰い受けることを相続といいます。なにぶん金銭に関することなので、その分け方でも問題が発生しやすいものです。財産が多ければ多いほど、トラブルは絶えません。そこで民法ではトラブル回避のためにもこれについての事柄を定めています。

まず遺産をもらいうける者を「相続人」といい、財産を残して亡くなられた者を「被相続人」というので覚えておいてください。民法に定められているものは法定相続人とよばれ、優先順位がつけられています。まず第1に死亡者の配偶者がそれにあたります。次に死亡者の子供、子供がいない場合は、その父母や祖父母、これら直系の親族もいなければ、兄弟姉妹が法定相続人として遺産を受けとる権利があります。

民法で認められる配偶者とは婚姻届を出している法的な夫婦に限ります。よって死亡の前に離婚が書面上で完了していれば、相続人にはなれません。また内縁の妻といった立場でもなることはできません。しかし、その間に生まれている子供が認知されているのなら、子供は相続人として認められるようですが、法的な夫婦間の間にも子供がいるのなら、配当分は同等にはなりません。

また夫が亡くなった際、妻が妊娠していた場合、その胎児も相続人として認められるようです。しかし、無事に生まれることが条件なので、流産や死産の場合は、その権利はありません。

生命保険金と相続

現在、多くの人がさまざまな生命保険に加入していることと思われます。保険契約者が死亡した場合の保険金の受け取りはほとんどが配偶者や子供となっているかもしれません。よって妻や子がこの保険金を受け取るのは、なされるべき保険契約の執行であって、相続ではありません。この受取人がもし「相続人」となっている場合、保険契約者の財産を相続する者が保険金を受け取るわけですが、これも同様に相続ではなく、保険契約の執行と考えられます。

では保険金の受け取りが契約者自身という契約内容であった場合、受け取る人が存在しないのですから、その相続人が暗黙の了解で保険金を貰い受ける方法と、保険金請求権を亡くなった人の遺産として考える方法があります。保険金取得を遺産として考えない場合なら、もし相続放棄をしても保険金は貰いうけることができるというわけです。

しかしここで注意したいのは、生命保険金は遺産ではなくても「みなし財産」として相続税の課税対象となることがあります。ただし土地や現金などの財産とは区別され、生命保険金には法定相続人1人について500万円の控除が認められています。よって保険会社から支払われた額が2000万だとして、死亡者には妻と子供が3人いたとすると、500×4=2000万円の控除がされるので、課税対象額が0となり、税金がかからないことになるわけです。

代襲相続

一般的に亡くなられた人の財産を相続するのは死亡者の配偶者、子供、親や兄弟姉妹などですが、子供に代わって孫、兄弟姉妹の代わりに甥や姪が財産を貰い受けることがあります。これを代襲相続とよびます。財産を残す者が死亡したとき、子供はすでに死亡していても孫がいるとすると、その孫が財産を受け取る代襲相続人となるのです。孫も死亡していても曾孫がいれば、その曾孫が代襲相続人となることもできるようです。直系であれば、何世代にわたってもその権利があります。

また代襲相続人の相続分は代襲者(被相続人の子供)が貰い受ける分と同量になります。代襲者に子供が何人もいれば、それを均等に分けます。例えば、Aさんには妻と子供が2人(長男、次男)いたとしましょう。車の事故でAさんと長男が同時に死亡したとします。長男には子供が3人います。Aさんの遺産は妻に2分の1、子供に2分の1配当されます。次男は2分の1の半分、全体の4分の1を相続します。長男は同時に死亡していますので、この場合代襲者となり、長男の子供が本来長男が貰い受けるべきだった4分の1を3人で分けるので、ひとりあたまの受け取り分は全体の12分の1となります。

また亡くなられた人に子供、孫、親、兄弟姉妹がいない場合は、甥や姪が代襲相続人として財産をもらいうけるケースもありますが、直系と異なり、甥や姪の子供にはその権利はありません。